ボイラとは
ボイラについて分かりやすく解説します。
ボイラは石炭・石油・天然ガスなどを燃やして発生する熱を用いて、水から蒸気を作る機器です。
この記事では、産業用に用いられる一般的なドラムボイラについて解説します。
ボイラは主に水壁管、ドラム、過熱器、節炭器で構成されます。
各機器の用途を概念図で説明します。
①水壁管:水壁管は燃焼ガスを取り囲むように設置され、高温ガスからの輻射熱を受けて水を蒸発させます。
②ドラム:ドラムは、水壁管から送られた水と蒸気を分離して、蒸気を過熱器管に送ります。また、水は再度、水壁管に送ります。
③過熱器:過熱器はドラムから送られてきた飽和蒸気をさらに熱して過熱蒸気を作ります。
④節炭器:節炭器は排ガスの熱でドラムに送られる給水を加熱します。
水壁管とは
水管とは、無数のチューブと薄板をつなぎ合わせたもので以下の役割があります。
・燃焼ガスを取り囲む壁
・燃焼ガスの輻射熱を受けて蒸気を作る
下図は、水壁管の概略図で、正面図・側面図・断面図を示します。
無数の水管が薄板との溶接によって繋ぎ合わされており、水管の上下端は管寄せに接続されます。
管寄せはドラムと配管によって繋がれており、ドラム~管寄せ~水壁管~管寄せ~ドラムと水がグルグル循環します。
下図のように、この水壁管で囲いを作ってガスの通り道を形成します。
下図は水壁管をぶった切って上から見た図です。
燃焼ガスは高温のため、ただの鉄板で通り道を作っても溶けてしまいます。
そこで水管内に水を循環させて水壁管の表面を冷やすことで、溶けずにガスの通り道を作ることが出来ます。
水管内は水と蒸気が入り混じった状態ですので、水管内の水と蒸気の温度はボイラ圧の飽和温度以上には上昇しないからです。
水壁管で囲われた空間(燃焼室)にて燃料を燃焼することによって、水壁管はガスの輻射熱を受けて、ドラムより送られた水を蒸気にします。
水壁管の管内では水と蒸気が混じり合った状態で存在し、再度ドラムに送られます。
(水管内の水が全て蒸気になってしまうと水管が焼損するので、そうならないように設計されます。)
ドラムとは
ドラムは、円筒形の大きな容器です。役割は主に下記の3つです。
・各水壁管に水を分配する
・給水が途切れてもボイラが壊れないようにある程度の水を溜めておく
ドラムの内部には、ダイソンの掃除機に付いてるような円錐形の部品がたくさん入っており、その中で水壁管から送られてきた蒸気と水がぐるぐる回されて、遠心力で水と蒸気が分離されます。
下図がドラムの概略図です。
ドラムは、以下に上げる沢山の配管が繋がれています。
・ドラムから水壁管へ水を分配するための降水管
・水壁管からドラムへ水と蒸気を送る上昇管
・飽和蒸気を過熱器へ送る蒸気管
・ボイラ給水ポンプ水を受け取るための給水管
ドラムには水や蒸気を各所へ分配するハブの役割があるのです。
また、ドラムにはある程度の容量の水を蓄えることが出来る様になっています。
ボイラ給水ポンプが故障して給水が途切れても、ボイラが焼損しないように、バーナーを消火してボイラ内の温度が下がるまでに水壁管の中に水が存在するようにするためです。
ドラムは水が循環するようにボイラの一番高い位置に設置されます。(ボイラの水循環については別途記事を作りたいと思います。)
過熱器とは
過熱器とはドラムから送気された飽和蒸気を過熱して、蒸気の温度を上昇させる蛇管です。
燃焼ガスからの対流伝熱にて蒸気を過熱します。
過熱器内の蒸気は高温であり、熱交換をするガスも高温であることから、ボイラの中で最も耐熱性能に優れた材料が選択されます。
また、燃焼ガスの成分によりますが、管壁温度が高ければ腐食速度が増すため、耐腐食性能に優れた材質を選択する必要があります。
節炭器とは
節炭器は燃焼ガスとの対流伝熱によって、ドラムへの給水を温めるための蛇管です。
水壁管や過熱器での伝熱により温度が下がってきた燃焼ガスも、まだ十分に熱を持っているので、無駄にしないよう給水を温めるのに使用します。
給水を温めることにより、ボイラで燃焼する燃料量を節約することが出来ます。
昔のボイラの燃料は主に石炭だったため、炭を節約するという名前が付いています。
節炭器の入口温度は、硫酸や塩酸が濃縮して結露して、管を腐食しないように、ガスの酸露点温度より高い温度となるように設計します。
また、節炭器内で水が蒸発して、管表面温度が高くなることで節炭器管が焼損しないように、節炭器出口給水温度は沸点より十分に低くなるように設計します。
以上、参考になれば幸いです。
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