空気予熱器の役割と種類
- 燃焼空気を温めて燃焼を容易にする。
- 排ガス温度を下げてボイラ効率を上げる。(ガス式の場合)
- 復水器で捨てる熱量を減少させてプラント効率を上げる(蒸気式の場合)
火力プラントで使用される空気予熱器は、ガス式と蒸気式に大別されます。
どちらの空気予熱器にも共通する役割は、ボイラの燃焼空気を燃焼前に温めて燃焼を容易にすることです。
燃料の種類によっては、冷たい空気を投入してしまうと、燃焼不良を起こしてしまいます。
ガス式空気予熱器は、ボイラ排ガスの熱を利用して燃焼空気を予熱します。
ボイラの排ガス温度を下げることでボイラ効率を向上させる役割があります。
蒸気式空気予熱器は蒸気によって燃焼空気を温めます。
加熱用の蒸気はタービン抽気を用いることが多く、これによって復水器で捨てる蒸気の熱量が減るので、プラント効率が向上します(詳細はこちら)。
ガス式空気予熱器の種類
ガス式空気予熱器には、様々な型式があります。
- 伝熱式 ⇒ 最近では使用されない
- 再生式
伝熱式
管や板を介してガスと空気で伝熱する方式で、管型と板型があります。(下図)
板型は構造が複雑なため、管型は次に述べる再生式に比べて容積当たりの伝熱量が少ないため、最近では採用されません。
再生式
多数の金属片を空気とガスに交互に触れさせることによって熱交換を行う空気予熱器です。
ガスと空気の流路は固定して、金属片を回転させる方式と金属片は固定してガスと空気の流路を回転させる方式がありますが、前者の方式を採用したユングストリーム式が一般的です。
ガス式空気予熱器の構造
ここでは、ユングストリーム型の概略図を示します。
ユングストリーム型では、エレメントと呼ばれる金属片を回転させて、ガスと空気に交互に接触させます。
エレメントがガスとの接触で温められ、空気との接触で放熱することで燃焼空気を予熱します。
ガス式空気予熱器では、これもボイラ排ガスの条件によりますが、150〜180℃程度まで空気を予熱します。燃焼ガスの温度を200℃前後まで下げるため、重油などの硫黄分が多い燃焼ガスでは、低温腐食を起こしエレメントがすぐにダメになってしまいます。
これを防ぐために、蒸気式空気予熱器を併用してガス式空気予熱器の入口空気温度を上げて、エレメントが酸露点以下にならないように対策する場合もあります。比較的硫黄分が少ない天然ガスなどを燃やすボイラの場合は酸露点がかなり低いので、ガス式空気予熱器のみを設置します。
エレメントにダストが詰まって通風抵抗が大きくなると、スートブロワの蒸気噴射によってダストを除去するようにしますが、ダストの多い燃料を使用するボイラに設置する場合には注意が必要です。
ガス式空気予熱器は、英語ではGas air heaterと書くのでGAHと記載されることがあります。
石炭などのダストが多く、硫黄分が高い燃料を燃やす場合は、低温腐食に注意する必要があるよ。
蒸気式空気予熱器の構造
下図に概略図を示します。
管寄せに送られた蒸気が、ケーシング内の蛇管を流れることによって、その外側を通る燃焼空気と熱交換することにより、燃焼空気を温めます。
ボイラの燃料や使用蒸気、その他条件にもよりますが、燃焼空気を120〜150℃まで予熱するのが一般的です。
英語ではSteam air heaterと書くのでSAHと記載されることがあります。
捨てるのは勿体無いから空気を温めるのに使用するんだね。
節炭器と空気予熱器の違い
節炭器とは、ボイラ排ガスの熱を利用して給水を加熱する蛇管です。
ボイラ排ガスを利用するのはガス式空気予熱器と同じですが、加熱対象が異なるので注意しましょう。
この記事は、「わかる蒸気工学(日新出版)」を参考にしています。
以上、参考になれば幸いです。