- ポンプの吐出圧・吸込み圧の計算方法を知りたい。
- ポンプの全揚程の計算方法を知りたい
- 計算例も合わせて見せて欲しい
この記事では、ポンプの吐出圧・吸込圧・全揚程の計算方法を解説して、ボイラ給水ポンプを例に実際の計算をして行きたいと思います。
プラントの計画にはポンプの揚程計算が必要不可欠です。
一緒に勉強していきましょう。
吐出圧・吸込圧の求め方
ポンプの吐出圧と吸込圧は、以下の3つの項目に分解して計算していきます。
(1)容器内圧力(圧力ヘッド) (p)
(2)水頭圧 (水頭ヘッド)(ph)
(3)配管の圧力損失 (摩擦損失ヘッド)(pf)
ポンプと容器の位置関係で符号が変わりますが、下図の場合は次の式のように計算できます。
吸込圧 P1 = (1)容器内圧力P1 + (2)水頭圧ph1 -(3)摩擦圧力損失
吐出圧 P2 = (1)容器内圧力P2 +(2)水頭圧ph2 +(3)摩擦圧力損失
それぞれについて解説します。
(1)容器内圧力(圧力ヘッド)p
容器内圧力(圧力ヘッド)は、輸送先や輸送元のタンク圧を指します。
ボイラ給水ポンプを例にすると、移送先の容器内圧力(圧力ヘッド)はドラム圧、 移送元の容器内圧力(圧力ヘッド)は脱気器器内圧 となります。
(2)水頭圧(ヘッド)ph
水頭圧はポンプと移送先のタンクや容器との、高さ方向の位置関係によって決まります。
ボイラ給水ポンプを例にするとボイラドラムはポンプより高い位置に設置されますので、その分吐出圧が必要になります。
水頭圧は以下の式で計算できます。
水頭圧 ph 【MPa = kgf /mm2】
= ポンプ中心から搬送先(元)容器水面までの高さ h 【m】
× 搬送流体の密度【kg/m3】/ 106 【m3/mm3】× 9.80665 【kgf / kg】
逆に、ボイラ給水ポンプはある程度NPSHreq(必要吸込みヘッド)が必要なので、水頭圧を稼ぐために、脱気器は高い位置に設置するよ!
(3)配管の圧力損失(損失ヘッド)pf
配管で輸送される液体や気体は、輸送中に配管内側表面との摩擦による損失が発生します。
この損失分だけポンプの吐出圧を高くしなければなりません。
配管の圧力損失の求め方は別記事にまとめていますので、こちら↓をご覧ください。
ポンプの全揚程の求め方
ポンプの全揚程は、ポンプの吐出圧、吸込圧の他に速度ヘッドを考慮する必要があります。
ポンプの全揚程 [m] を圧力 [MPa] に直したものを全圧と呼びますが、全圧は動圧と静圧を足したものになります。前章までに求めたポンプの吐出圧や吸込圧は静圧なので
ポンプの全揚程は以下の式で求まります。
全揚程 = 全圧 =( 吐出圧+吐出側動圧 )- ( 吸込圧+吸込側動圧 )
( v : 吐出速度 or 吸込速度 g : 重力加速度 )
実際に計算してみよう!
では、実際にポンプ吐出圧・吸込圧・全揚程を計算していきましょう。
ここでは、ボイラ給水ポンプを取り上げたいと思います。
まずは、吐出圧と吸込圧について
①吸込側 : 脱気器〜ボイラ給水ポンプ
②吐出側 : ボイラ給水ポンプ〜ボイラドラム
のそれぞれについて計算をしていきましょう。
設定は以下の通りとします。
・ドラム圧 : 5MPaG
・ドラムへの供給水量:5,000kg/hr
・脱気器圧 : 0.5MPaG
配管ルートは以下の通りとします。(ものすごく適当です。)
①吸込圧の計算
では、①吸込側から計算していきましょう。
(1)吸込側の容器内圧力(圧力ヘッド) p1
圧力ヘッドは、脱気器の器内圧力(0.5MPaG)です。
(2) 吸込側の 水頭圧(ヘッド)ph1
脱気器はポンプより8m高い位置に設置されます。
脱気器の器内圧力が0.5MPaGなので、脱気器内の給水温度は160 ℃(0.5 MPaGの飽和温度)、密度は908 kg/m2です。
(飽和温度と密度はこちら⇒https://www.tlv.com/ja/steam-info/steam-table/)
よって、水頭圧は
Ph1 = 8【m】 × 908【kg/m3】/ 106 【m2/mm2】× 9.80665 【kgf / kg】
= 0.071MPa
となります。
(3) 吸込側の配管の圧力損失(損失ヘッド)pf1
配管の圧力損失は、こちらの記事通りに計算すると
Pf1 = 0.007MPa
となります。
↓エクセルでの計算例です。(画像をクリックすると拡大できます。)
以上より、
吸込み圧 = 圧力ヘッド + 水頭ヘッド- 配管損失ヘッド
= 0.5 + 0.071 – 0.007 ≒ 0.57MPa
と計算できます。
②吐出圧の計算
次に、②吐出側を計算して行きます。
(1)吐出側の容器内圧力(圧力ヘッド) p2
ドラム圧は5MPaです。
(2) 吐出側の水頭圧(ヘッド)ph2
ドラムは給水ポンプより10m高い位置に設置され、ドラム圧5MPa、温度160℃の給水の比重は、910kg/m3程度なので、水頭ヘッドは以下のように計算できます。
Ph2 = 10【m】 × 910【kg/m3】/ 106 【m2/mm2】× 9.80665 【kgf / kg】
= 0.089MPa
となります。
(3) 吐出側の配管の圧力損失(損失ヘッド)pf2
配管の圧力損失は、こちらの記事通りに計算すると
Pf2 (調節弁含まず) = 0.037 MPa
となります。
↓エクセルでの計算例です。(画像をクリックすると拡大できます。)
給水流量調節弁の圧力損失は、配管の圧力損失との合計の50〜70%となるように選定します。
ここでは50%で計算します。
よって、CVも含めた配管圧損は
Pf2 = 0.037 × 2 = 0.074 MPa
です。
ポンプの吐出圧を決める段階では、一般的に配管の摩擦による圧力損失の50〜70%が調節弁での圧力損失となるように計画したら良いと思うよ。ポンプの性能曲線をポンプメーカーから受領したら、現状の調節弁の計画で最大流量・最小流量を制御できることを確かめよう!
以上より、ボイラ給水ポンプの吐出圧は
吐出圧 = 容器内圧力 + 水頭ヘッド + 損失ヘッド
= 5 + 0.089 + 0.074 = 5.16 MPa
となります。
ポンプの全揚程の計算例
次にポンプの全揚程の計算です。
また、ポンプの全揚程は
ポンプの入口流速1.1m/s、出口流速1.3m/sとすると(配管の圧力損失の計算シートで求めています。)
全揚程=全圧=( 吐出圧+吐出側動圧 )-( 吸込み圧+吸込側動圧 )
={ 5.13 + 1.32 / (2 * 9.81) } – { 0.57 + 1.12 / (2 * 9.81) }
≒ 4.6 MPa
となります。
以上、参考になれば幸いです。
まとめ
- 吐出圧・吸込圧は、容器内圧力・水頭圧・配管の圧力損失を計算して求める
- 全揚程は、
(吐出圧+吐出側動圧)ー(吸込圧+吸込側動圧)
で求める。
以上、参考になれば幸いです。