どうやって選ぶ?ターボ型ポンプの種類とその選定方法【基本を解説】

  • 2021年8月12日
  • 2021年8月12日
  • ポンプ
  • ポンプの種類はどんなのがあるの?
  • どうやって選定するの?
  • 揚程?NPSH?
  • ポンプの基本を学びたいな


こんな人に向けた記事です。

こんにちは。

プラントエンジニアの火プライオンです。

この記事では、ポンプの種類を紹介するとともに、ポンプの型式選定の方法について分かりやすく解説していきます。
 

 
火プライオン
一緒に勉強しよう!


●この記事の内容

  • ターボ型ポンプの種類を紹介【渦巻ポンプ、斜流ポンプ、軸流ポンプ】
  • ポンプの種類は比速度で選ぶ! 選定方法をフローを交えて解説
  • 型式選定に必要な知識を解説【比速度、揚程、有効吸込みヘッド、吸込み比速度など】
  • ターボ型ポンプ以外のポンプも紹介(記事の最後)


 

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ポンプの種類とその用途

ポンプの種類には様々なものがありますが、この記事ではポンプの種類の中で最も使用されるターボ型ポンプに絞って説明したいと思います。(ターボ型ポンプ以外は記事の最後に少し触れたいと思います。)

ターボ型ポンプの種類と主な用途は以下の通りです。

 ①渦巻ポンプ・・・高い吐出圧が必要な場合に利用する。ボイラの給水系統など。

 ②斜流ポンプ・・・吐出圧、吐出量ともにある程度必要な場合に利用する。雨水排水用など。

 ③軸流ポンプ・・・吐出量が多く必要な場合に利用する。河川排水など。


それぞれについて詳しく見ていきましょう。

①渦巻ポンプ

渦巻ポンプは、遠心ポンプとも呼ばれ、羽根車の回転による遠心力によって水を押し出すタイプのポンプです。

産業用のポンプの中で最も多く使われています。

下図に片側吸い込み渦巻ポンプの概略図を示します。

左側が渦巻ポンプを輪切りにして横から見た図で、右側が渦巻ポンプの羽根車の概略図です。

渦巻ポンプは高い吐出圧が必要な時に選択されますが、ある程度流量が必要な場合は、羽根車の吸い込み口を両側に設けた両吸い込み渦巻ポンプを採用します。(下図)




また、ボイラ給水ポンプなど超高圧の吐出圧が求められる場合は、羽根車を複数段用意します。

一段の羽根車で圧力を上げようとすると、羽根車の回転半径を大きくする必要があります。

しかし、材料の強度によって、半径を大きくするにも限界があるからです。

1段目で昇圧した水を、2段目、3段目と複数回に分けて羽根車に導くことでさらに昇圧することが出来ます。

このポンプを多段渦巻ポンプと呼びます。

②斜流ポンプ

斜流ポンプの羽根車の形は渦巻ポンプと異なります。渦巻ポンプと軸流ポンプの中間のようなポンプです。

羽根車の回転による遠心力と羽根車の揚力の両方によってエネルギーを水に与えます。

吐出圧も吐出量も必要な場合に選択され、雨水排水用などに利用されます。




③軸流ポンプ

軸流ポンプは、以前はプロペラポンプと呼ばれていて、揚程は羽根が水に与える揚力によって生じます。

扇風機の羽根をイメージすれば分かりやすいです。水は、羽根車の回転軸の軸方向から入って出ていきます。

高い揚程が必要でなく、流量が多く必要な場合に選択され、河川排水などに利用されます。

では、これらのポンプはどうやって選定すれば良いのでしょうか?

ポンプの計画と形式の選定方法

ポンプの形式は比速度を求めれば決まる!

ポンプの羽根車の形状(ポンプの型式)は下図のようにポンプの比速度Nsを求めることで決まります。

比速度が小さければ、羽根車の形状が細長い渦巻ポンプを採用します。

そして、比速度が大きくなるにつれて形状がズングリとした渦巻ポンプを採用することになり、

さらに比速度が大きくなると、斜流ポンプ、軸流ポンプと採用する形式が変わります。

下図に比速度に対する羽根車の形状を。

下表に渦巻ポンプ、斜流ポンプ、軸流ポンプがカバーする比速度の範囲を示します。

次に比速度とは何なのかについて見ていきましょう。

比速度とは?

比速度Nsとは、ポンプの全揚程、吐出量、回転速度を用いて次式で表されます。

$$Ns = N* \frac{Q^{\frac{1}{2}}}{H^{\frac{3}{4}}}$$

記号の説明

 N : 回転速度[min-1]

 Q : 吐出量[m3/min]

 H : 全揚程[m]

 (ただし、すべて最高効率点の数値)

遠心ポンプの特性を表す数値として、吐出量、全揚程、効率、回転速度、NPSH3などがありますが、このうちポンプの大きさや形状は、吐出量と全揚程、そして回転速度によって決まります。

したがって、一つの特性値を用いて、ポンプの特性や形状を表すことが出来れば、性能評価、比例設計、性能予測などに利用できるため、便利になります。

その便利な数値が比速度です。

では、比速度を求めるまでの過程を見ていきましょう。フロー図にまとめました。

比速度を求めるには、(1)全揚程、(2)回転速度、(3)吐出量が必要です。

さらに(2)回転数を求めるには、 (3)吐出量 に加えて、(2-1)吸込み比速度、(2-2)有効吸込みヘッドが必要になります。

それぞれの(1)~(3)の項目について順番に見ていきましょう。

(1)ポンプの揚程

揚程とは、ポンプが水を汲み上げることが可能な高さを言います。

ポンプで発生するべき揚程を全揚程と呼び、吸込み液面から吐出し液面までの高さを実揚程と呼びます。(下図)

 
 

ポンプの全揚程は、実揚程以外に、圧力ヘッド、速度ヘッド、管路の摩擦損失ヘッド、弁・曲管などの損失を加えて表されます。

式で表すと次のようになります。

$$H=h_a+h_p+h_v+h_f+h_x$$

記号の説明

H : 全揚程[m] 
ha : 実揚程[m]
hp : 圧力ヘッド=吐出し、吸込み液面に働く圧力ヘッド差
hp = (pd-ps) /ρg
Pd : 吐出し液面に働く圧力[Pa]
Ps : 吸込み液面に働く圧力[Pa]
ρ : 液体の密度[kg/m3]
hv : 速度ヘッド   
hv = (v2d-v2s) / 2g   
g : 重力加速度
hf : 管路の損失ヘッド
hx : 弁、曲管、などにおける損失ヘッド

詳しい揚程の求め方は、また別記事で書きたいと思います。

(2)ポンプの回転数

ポンプの回転数を求めるには、(2-1)有効吸込みヘッドと(2-2)吸込み比速度について決定する必要があります。

それぞれについて説明します。

(2-1)有効吸込みヘッド

有効吸込みヘッド(NPSHavaや NPSHAと書く)は、そのポンプの吸込み側に有効なヘッドを言います。

ポンプは羽根車を高速回転させて、水の流速を上げて押し出すため、羽根車の入口部では水の圧力が下がります。

水は、圧力が下がり飽和蒸気圧以下になると蒸気へと変化します。

これをキャビテーションと言い、万が一、キャビテーションが発生するとポンプの吐出圧が下がったり、最悪の場合はポンプの故障に繋がります。

このため、ポンプ内で蒸気が発生しないように(飽和蒸気圧以下に圧力が下がらないように)、ポンプの入口圧力をある程度確保する必要あります。

この圧力を必要吸込みヘッド(NPSHreqやNPSH3と書く)と呼びます。

「必要吸込みヘッド」はポンプ固有の値で、「有効吸込みヘッド」はプラント設計者側が配管の条件などで設定する値です。

「有効吸込みヘッド 」は「 必要吸込みヘッド」 より大きくする必要があります。

有効吸込みヘッドの求め方は別記事にてまとめたいと思います。

(2-2)吸込み比速度

吸込み比速度とは、ポンプの吸込み性能を表す指標で、ポンプの回転速度N、吐出量QおよびNPSHAで次のように計算します。

$$S=N * \frac{Q^{\frac{1}{2}}}{NPSHA^{\frac{3}{4}}}$$

記号の説明
 N : 回転速度[rpm)
 Q : 吐出量[m3/min]

 NPSHA : 有効吸込みヘッド[m]

  (ただし、すべて最高効率点の数値)

吸込みヘッドは、ポンプの形式によらず値がS=1200~1800となります。(効率の良い設計ではS=1200、吸込み性能を重視する場合はS=1800が上限になります。)

上式から分かるように、効率を重視してポンプを選定する場合は(吸込み比速度 S=1200とする場合は)、吐出量とNPSHAが決まっていれば、ポンプの回転数が決まります。

(3)吐出量

ポンプの吐出量は、ポンプが吐き出す水の量です。

ボイラ給水ポンプでは、ボイラの蒸発量にボイラのブロー量や蒸気への注水量などを考慮して決めます。

ポンプで流体を送る対象に必要な流量を算出しましょう。

以上より、比速度を求めるための項目がそろいました。

ポンプの選定方法まとめ

以上をまとめます。

ポンプの選定方法まとめ

  • ポンプの型式は比速度を求めることで決定できる。
  • 比速度は(1)全揚程、(2)回転数、(3)吐出量で求まる
  • (2)回転数は、(3)吐出量に加えて(2-1)有効吸込みヘッド、(2-2)吸込み比速度で求まる。

ポンプの選定方法(簡易版)

ここまでは、ポンプの形式を選定するには、ポンプの吐出量、揚程、回転速度(有効吸込みヘッド)が分かれば良いことを説明しました。

しかし、揚程と吐出量しか決まっていない場合でも、下に示すグラフによりポンプの型式の目安を得ることが出来ます。

最低限、揚程と吐出量をポンプメーカーに連絡すれば、ポンプメーカーから用途に近いポンプを提案してもらうことが出来ます。(もちろん、流体の温度や、スラリーの有無なども連絡する必要があります。)

JISより抜粋

その他のポンプの種類

ターボ型ポンプ以外のポンプについても簡単に紹介します。

下表にまとめました。

以上、参考になれば幸いです。

この記事の参考文献

この記事は

「絵とき ポンプ基礎のきそ(日刊工業新聞社)」⇒ポンプを基本から学ぶ人にお勧めです。

「渦巻ポンプの設計(パワー社)」⇒ポンプの設計方法について勉強したい人にお勧めです。

「ターボポンプ(ターボ機械協会)」⇒発注者側の視点でポンプについて学ぶのであれば、この一冊がお勧めです。

を参考に作成しました。

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