ランキンサイクルの効率を上げるにはタービン入口蒸気圧力と温度の両方を上げなければなりません。
熱力学的には圧力・温度どちらか一方を上げれば効率は向上しますが、
圧力だけを高く設定するとタービン内で仕事をした蒸気が湿りやすくなります。
湿った蒸気はタービン翼をボロボロにしてしまうので、
これを防ぐために蒸気温度も高くする必要があります。
タービン入口蒸気圧力と温度の関係
タービン入口蒸気圧力・温度は一般的に下表を基準に設定します。
圧力が高くなるにつれて、温度も高くなっていることが分かります。
圧力 | 6MPaG | 8.6MPaG | 10MPaG | 12.5MPaG | 16.6MPaG |
温度 | 440~480℃ | 480~510℃ | 510~538℃ | 510~538℃ | 538~566℃ |
タービン入口蒸気圧力のみ高くすると。。。
では、圧力だけを高くするとなぜダメなのか、T-S線図で詳しく見ていきましょう。
下図の様にタービン入口蒸気圧力だけを上げると黒線から赤線へとランキンサイクルの
T-S線は移動します。
そして、タービン入口③とタービン出口④とを結ぶ縦の線と飽和蒸気線との交点の位置が上側に移動しているのが分かります。
これは、タービン入口蒸気の温度を一定のまま、圧力だけを高くするとタービンを回している蒸気がより早く湿りやすくなる事を意味します。(飽和蒸気線の左側は湿り蒸気、右側は過熱蒸気です。)
タービン翼に湿った蒸気を当てるとタービン翼がボロボロになってしまうので、蒸気が湿る前にタービンから蒸気を取り出さなくてはなりません。
つまり、蒸気圧力を上げるだけでは、タービンの効率を上げるには不十分と言えます。
タービン入口蒸気温度を上げる
では、蒸気温度を上げた場合のT-S線図を見てみましょう。
同様に、タービン入口蒸気温度だけを上げると下図のように黒線から赤線へとランキンサイクルのT-S線は移動します。
この場合、タービン入口③とタービン出口④とを結ぶ縦の線と飽和蒸気線との交点の位置が下側に移動しているのが分かります。
これは、蒸気温度を上げる事でタービン内で仕事をしている蒸気が湿りにくくなることを意味します。
まとめ
ランキンサイクルの効率をあげるには、タービン入口蒸気圧力と温度を上げれば良いです。
しかし、タービン入口蒸気圧力のみを上げると、タービン内の蒸気が膨張によって湿るタイミングが早くなってしまいます。
これを防ぐため、圧力と比例して蒸気温度も上げる必要があります。
以上、参考になれば幸いです。
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